さて昨日心配していた試験が終わり、夕方からはまたのんびりモードに入った。しかし久しぶりに開けたワインを一人で全部飲んでしまい、今朝になったら頭痛が…。久しぶりに飲むときは要注意である。まだ来週も一つ試験があるのだが、そちらはスタディガイドをもらい、どういった内容のエッセイ問題が出されるのか例題をもらったので、気がラクなのである。(しかし今のところ全く勉強はしていないのでそろそろとりかからないと。)
今はBiogeographyの授業を終えて帰って来て落ち着いたところ。実はこの授業、私のお気に入りなのだ。(もちろん他の2科目も気に入っているが。)「Biogeography」、タイトルどおり生態圏に関することや生物の地理的な分布を学ぶのだが、初めて知る「へぇ」が沢山あってとても楽しいのだ。何せ光合成が3種類もあるなんて今までちっとも知らなかった無知な私。そのため吸収できることが多くて、毎回とても新鮮なのだ。加えて、教授の教え方、人柄が加わって、とても楽しみな授業になっている。
今までどういうことを学んできたかと言うと、まず生物の分布を主に決めるのは温度と湿度(降水量)で、冬の最低気温(または7月の平均気温など)が何度以下の地域ではこの木は見られなくなるとか、寒さや暑さと闘うために生物がどのような仕組みを持っているとか、動物はどのように対応してきたかなど。
私がへぇと思ったのは、葉が落ちるということは、Dormancy状態に入ることであり、寒い環境で生き残るための方法であると知ったこと。葉が落ちるのは、日本に住んでいる限り自然なことだし、そしてもちろん秋から冬に葉が落ちてしまうことは知っていたが、特に深く考えたこともなかったのだ。そうか、あれは寒さ対策だったのか、と当たり前のことに今更気が付いたのだった。
他に寒さ対策としてSupercoolingというのがある。これは針葉樹などが凍ってしまうのを避けるために、葉の中にアルコールのような化学物質を作り出すというものだ。葉の中の水分量を減らしたり、サボテンのように多肉植物は昼間溜めておいた熱を夜になると放出し、自分自身を暖めるたりするらしい。そして幹がまだ太くない若いサボテンは十分に熱を溜めておくことができないので、他の植物の下に隠れて育つそうだ。
一方、動物にはinsulltationという機能があり、体からの熱の放出を抑えるために脂肪、毛や羽を伸ばしたりするらしい。そのほか一般的に寒い地域の動物は、暖かいところにすむ同種の動物よりもextremities(足や耳)などが短いそうだ。これによりheat lossを減らすことができるとのこと。
また乾燥に対する素晴らしい対抗策を講じているのはサボテンである。順に書いてみると、
– 地表に近いところに集中的に根を張り、落ちてきた雨は逃さないようにする。
– 茎を広げ、中のtissueに水を蓄えられるようにする。
– 葉をなくし、硬いトゲを持つ。
– 明るいグリーンのトゲは太陽と風による乾燥を防ぐ。
– 表面をワックスコーティングする。
– 水のロスを押さえるため深く入り込んだ気孔を持つ。
– CAM光合成をする。これは昼間気孔を開かずに、夜間だけ気孔を開いて光合成のために必要なCO2を取り入れる光合成の一つ。
– 寒い夜の間しか気孔が開かないので、気孔からの水分の蒸発を最低限に抑えられる。
いやー、サボテン、頑張っていたのである。他の生物の進化も気候条件と絡まって進化しており、自分の周りにある環境のことだけに実に興味深い。
そして光合成が最高に行われる温度のゾーン(zone of optimum)には、生物の数も最も多くなる。植物はエネルギーのPrimary producerであり、他の生き物は自分自身でエネルギーを作り出すことができないため、植物に依存している。だから光合成が最も行われる気温ゾーンは、それを消費する生き物が多く存在することになる。つまり連動するわけだ。食物連鎖として、Primary producerから次の消費者、さらにその次の消費者とエネルギーが受け継がれていくのだが、消費プロセスを通して生物は元の生物が持っている10%しかエネルギーを受け継げないそうだ。
例えばプランクトン(Primary producer)のエネルギー量が100とすると、次にそれを食べるクラゲなどはその10%しかプランクトンから栄養を吸収できず、それを食べる魚は更に10%、それを食べる大型の魚も10%、最終的に鮫がその大型の魚を食べるときにはその10%という程度のエネルギーしか受け継がれていかないらしい。だから鮫の数は少なくならざるを得ない。最初にプランクトンが作り出した総エネルギー量のほんのわずかなエネルギーしか鮫は受け取れないために、数が多かったら生き残っていけないらしい。これは私にはとっては大きな「へぇ。」だった。
というようにこの授業あまり勉強している感じがせず、身の回りのことを近所の物知りおじさんにとても詳しく教えてもらっているような感覚なのだ。物知りおじさんと言うと垢抜けない気がするが、実は教授は超イケメンなのだ。この授業を選んだときに、いくつか選択肢があったので、教授の評判を調べ、教授のWeb pageをのぞいてみた。そこでフィールドワークをしている教授の写真を発見。「格好いい!」と思った私はすぐに迷わずこの授業に登録したのだった。(こういうインスピレーションも大事。)
この教授は本当に教えるのが上手な人で、大事なことは繰り返してくれるし、全てを分かりやすいように説明してくれる。そして冗談もツボを押さえていて、よく学生を笑わせてくれる。生徒とのやりとりも上手いし、マイクなしでも堂々としたよく通る声で100人以上の生徒を授業に集中させるのに成功している。私が今までに教えていただいた人の中で、最も「教えるのがまさに天職として生まれついたような人」だと思う。この授業を悪く言う人はいないのではないだろうか。ちなみに教授のレーティングは学校のウェブサイトによると、8.55。Geographyの他の教授の平均が6.56なので、この教授はやはり皆から高い評価を受けている。
今日は自分が昨年行ったWest Hollywoodのハロウィーンイベントの写真を授業のスライドの間に入れ込んでいた。顔にペイントしてますね、教授。いくつになってもアメリカ人は楽しそうだ。今年もまたWest Hollywoodに行くらしい。大きなイベントらしいので(通りを通行止めにしてしまうほど)私も一度くらいは行ってみてもいいかも。最後に教授は「Trick or treat!」と言って、持参したチョコレートを広げてくれた。
私のメジャーに関係のない授業ではあるが、この授業で教えてもらっていることは実際に身の回りのことが多いので、自然に対する見方がとても深まる気がしている。
ちなみに教授は今年も仮装をしていくそうだ。(笑)