朝、冷凍の肉を切っていたら、ざくっと指を切った。普段は冷凍にする肉は小分けにしてから冷凍にするのだが、たまに時間がないと切る作業が後になる。ま、そんなわけで朝お弁当を作っていたら、ざくっと。それもしゃれにならない深い傷。しかも長い切り口。当然のごとく、血がだらだらと。
抑えているだけでは止まらない。しかし抑えていないわけにもいかず、しばらくそのまま。数分後ガーゼを巻きぐるぐるにした。どうしよう?同居人は「Urgent Careへ行った方がいい。」と言う。そうだよな、絶対これじゃ、縫わないと駄目な傷だよな、と自分でも思う。急いで着替えて家を出た。
しかしうっかり高速の出口を逃してしまって、予定よりも30分遅くUrgent Careにたどり着く。この時点で既に切ってから1時間少し。初めて行った病院だったので、数々の書類にサインしてやっと診察。まず看護婦さんに会って、血圧、熱などを測られ、来院理由、飲んでいる薬などを聞かれる。tetanusの予防接種はいつ受けたか聞かれたが、多分グリーンカードを取ったとき5年前にいろいろな予防接種を受けたと思うと答えたところ、それじゃ分からないのと同じよ、と言われてしまった。一瞬、tetanusって何だっけ?と思ったのだが、この状態で聞かれるのは破傷風に決まっているわけで。
看護婦さんにガーゼを剥がされたら、止まっていたのかと思った血が全然止まっていなかったことに気づく。げっ、まだ勢い止まらず。小さなカップに茶色の液体に、しばらく手をつけておくように言われて、待つこと5分ほど。血がその中で小さく固まって、ぷかぷかと泡に紛れて浮いていた。
しばらくしたらドクターがやってきて、あー、これは縫わないとね、と言って出て行った。今度は別のナースがやってきて、破傷風の予防接種をされた。そしてその後麻酔注射をされてちくちくと縫われた。「Nasty Cutだね。」と何度もつぶやくドクター。傷は結構長い。抜糸前に二度下にひいてあった30cm四方のガーゼが取り替えられた。どちらも血で真っ赤になってしまったのだ。こんなにすごい出血、なかなかない。今年二度目。そして縫われたのも今年二度目。物心ついてから縫ったのは多分6度目。子供のときの傷が二度と、大人になってから手術で二回。しかしこのたった5ヶ月では二度も。そしてまたまた左手。何か良くないものに憑かれているのか。日本だったらすぐに御払いに行くところ。
しかしものすごく痛くなることを予想していたのだが、指が固いガーゼで固定されてしまっているせいか、今のところは我慢できる痛さ。薬を出すかもと言っていたが、昨日風邪と真っ赤な目でもらった薬が強力な炎症止めらしく、薬はなし。薬が一石三鳥になった。
さて左手の親指の内側をざっくり切ったわけで、とっさに思ったのは、パソコンが使いづらいかもということ。私は左手の親指でスペースキーを押す人なので。ところがあっという間に右手が活躍。更に左手でチューブを押してクリームなどが出しにくいことにも気がついた。しかしこれも慣れたら左手の薬指と小指でチューブを抱えて押すと不自由はないことが分かった。使えないと他のところが動く。人間ってよくできていると思う。
ところがどうしてもなかなかできないことがたった一つだけあった。Braの後ろのホックがなかなか留められないのだ。これには3分ほどかかってしまった。手をねじって後ろに持っていって親指が使えないと、こんな作業がこれほど大変だったとは。しかし実は、これは二度目の経験。今年左手を痛めたときも(未だに少し痛いが)、同じことを感じたのだった。他の何の動作よりも、痛い左手に更に痛みを与える一番の作業は、このホックを留めるということだった。今回、再実感。でも確かに日常生活で手を後ろに持っていってしなければならない作業って、これくらいかもしれない。スカートのホックは前で止めて後ろに回せばいいが、Braはそういうわけにはいかない。
というわけで傷は思ったよりは深く、かなり腫れてはいるものの、とりあえず痛みもそれほどでなく、日常生活にもあまり差し障りはなかったので、よかった。2日後にまた病院へ行き、10日後に抜糸だと言われた。指の内側なので特にまじまじと見つめない限り、人目にも触れないと思う。不幸中の幸い。唇の下を切って1.5cm以上の傷を作ったのに、下唇と近かったため、あまり目立たない7月の傷と同様、場所がずれていなくてよかったわー、とまたしても思った。一番いいのは怪我をしないことなのはもちろんだが。
それにしても何で左手ばかりこういうことが起きるのか。自転車でこけた大きな傷跡も左手、狂った女の人に襲われたときに痛め、数年痛かったのも左手親指、7月に気絶して負傷した(そして今も少し痛い)のも左手、そして今回傷を負ったのも左手親指。来年日本に帰ったときには、御払いに行って来ようと思う。