金曜日の大領領選ディベートは、私もハンバーグを作りながら聞いていた。なのでTV画面はほとんど見なかったわけだが、私は個人的な印象としてはMcCainの声は弱いように感じた。実際画面で見ても、年寄りすぎると思う。あとMcCainは、何度も「many, many years」の経験があると、外交問題では力説していたが、その場所に行ったことがあるという経験が、一体これからの国策や外交問題にどの程度役に立つのか、その関連について説明はなかったと思う。そんな昔の栄光を誇示するだけでどうするのか、というのが私の感想。
一方Obamaの言ったことで、アメリカ人に受けないかな、と私が思ったのは、北朝鮮などに対しても話し合いで解決を目指していくと言っていたこと。アメリカ人は強いアメリカが好きなのだ。
またMcCainは、企業に対する税金をカットすれば、その分が企業や従業員に回り、そのお金で健康保険も手にすることができる、というようなことを言っていたのだが、私は「それ、絶対にあり得ない。」と一人でぶつぶつと反論していた。
私は、Democratic Party支持である。今回のディベートは経済問題と外交問題がメインだったようなので、あまり私の関心事ではなかったが、私はDemocratic Partyのヘルスケアシステム改革に賛成しているのだ。夏に取った授業「Health Services」の授業で、McCainとObamaのヘルスケアに対する考え方の比較記事を読んだ。これを読む限り、私は明らかにObama支持である。
以下がその記事の一部。(Newsletter of the American Medical Student Association)実際は10項目ほどあるのだが、そのうちの一番最初のもの。
[McCain’s Plan]
– Addressing access to health care for families and individuals. The McCain plan will use competition among insurance providers to lower prices, increase portability and improve the variety of health insurance options to match people’s needs.
[Obama’s plan]
– A new public insurance program that will be open to the self-employed, other individuals without access to group coverage, and small businesses that want to offer insurance to their employees. Coverage will include all essential medical services, including preventive, maternity and mental health care.
私は、マーケットや企業が全てを提供できる、競争が保険の市場価格を下げるというMcCainの考えがうまく働くようには思えない。競争が働いてきた結果、今のように複雑な形となってしまったのが、アメリカのヘルスケアシステムだからだ。しかしObamaが言うような公共の保険を作るのは、(何せヒラリーがクリントン政権時代長年取り組んでいたが、結局実現できなかったことでもあるので)実際はなかなか難しいだろうとは思うが、少しでも多くの人にヘルスケアを提供できるような仕組みに取り組んでいこうという考えのObamaを私は支持したい。健康に関する仕組みは全ての人に同等に提供されるべきであると私は強く思っているからだ。
さて今日から始まったPublic Health150の授業。この教授も、アメリカのヘルスケアのお粗末さを嘆いているようで、いろいろとアメリカのヘルスケアの諸問題をさらっと説明した後、「皆が民主党へ投票してくれることを望んでいるよ。」と言っていた。夏に取った教授も、今日の教授も元々はお医者さん。Public Healthという分野は昔はなかったらしく、ドクターが治療、環境などを手がけてきて、今のようにPublic Healthという学問ができたようだ。この二人の教授の話を聞くと、医療関係者は本当にアメリカのヘルスケアシステムが行き詰っていることをつくづくと感じているようだ。例えば、高いお金を払っているにも関わらず、満足な治療が受けられない。保険がないための初期治療が遅れが、特定の人種のアメリカの致死率をなかなか下げられない、など。
アメリカのヘルスケア全体への支出は大きい。GDPの16%も占める。アメリカのGDPの高さを考えると、他の国とは比較にならない。アメリカのヘルスケアの一人当たりの支出を100とした場合、次に高いのはスイスで68%、次がノルウェーで60%、ドイツ、カナダが57%、日本は44%である。OECD国の平均は44%。こう見るといかにアメリカ人が多くの医療費、保険代を支出しているかが分かると思う。(「Health Affairs, based on 2002 data from OECD」より。)
こんなに医療費を支払っているにも関わらず、アメリカは決して致死率が一番低いわけでもなく、寿命が特別長いわけでもない。これらの支出は複雑すぎるヘルスケアの中で、余分な手続きの中で(統合されたシステムが存在していないため)、使われてしまうのだ。このまま保険代や医療費が上がり続けたら、支払うことのできなくなる人がますます増えてしまうだろう。そして雇用を基本にした健康保険システムのため、失業者はそのシステムから取り残されてしまう。今一番治療が受けられないのは、実はミドルクラスの人たちである。高すぎる保険代を支払えるほどの収入がないのだ。この悪化する経済状態の中、失業者が増え、保険代を支払うことができないミドルクラスが増えていけば、将来アメリカ人の健康状態が決してよくなることはないだろう。なのでやはり幅広い公的な何らかの補助的な健康保険は、アメリカには必要だと思う。
ということで、私は何らかの公的な健康保険ができることを期待して、Obama に大統領になってもらうことを希望している。