アメリカでは先週は、Thanksgivingのホリデーで、私は木曜日にティファナ空港へ人を迎えに行った。そのときにちょっと変わった経験をしたので、今日はその話について。
迎えに行った人は、メキシコ人でアメリカのビザを持っていた。そして私たちは彼女を空港で拾った後、車でアメリカ側へ戻った。ところが国境の検査で、「彼女はビザの他にPermissionが必要だ」と言われてしまった。「とりあえず今ここで車を止めはしないので、一度国境のImmigrationへ行き直して、6ドル払ってPermissionをもらうように。」との指示を受けた。
そのままアメリカに滞在しても(1週間の旅行なので)大して問題ではないとは思ったが、何かあってもイヤなので、一応Permissionをもらいに行くことにした。のんびりとアメリカ側でお昼を食べてから、そのImmigration施設へ向かった。すると、国境警備員に「こちら側からは入れないから、一度メキシコへ入って、メキシコ側から施設へ入るように。」と言われてしまった。車で国境を越えるのには、大体2,3時間は並ばないとならないので、私たちは車を駐車場に停めて徒歩でメキシコへ入った。
メキシコ側では、国境を越えるための車のラインは何重にもなっていて(多分6,7列)、道路を横切らないと道路の反対側にある施設に行くことができない。しかし車は国境を越えるために、いつも停止状態。なので止まっている(あるいは走っていても時速5kmくらいの)車の間をすり抜けて反対側へ渡った。国境を越える渋滞の間は、いつも物を売っている人がうろうろとしている。普通の道路のはずなのだが、常に車が止まっているような状態なので、食べ物、コーヒーからお土産までいろいろな物が、車の間を歩く人々によって売られている。道路を横断したときは、いつも車の中から見ている人たちと同じ視線に立ったことが、何だか新鮮だった。「何だか不思議だね、いつもは車の中にいるのに、今日は売り子の人と同じところに立っているよ。」なんて話をしながら、施設に入った。
さて、施設でPermissionをもらうための列に並んでいたときだった。急にオフィサーが何か大声で叫んだ。若い男の人が走って逃げて行った。そして数人のオフィサーが一人の男の人を追いかけた。しかし実は走って逃げても無駄。鉄の回転扉は外から中に入って来られるが、中から外へは抜けられない。まもなく体の後ろで手錠をかけられた人が、オフィサーに連れられて戻って来た。オフィサーの画面には、おそらくその人の写真。不法入国しようとしたか、あるいは犯罪者だったか、のどちらかだろう。私たちのように簡単にアメリカへ出入りできる人たちもいる一方で、閉ざされてしまう人もいる。
その後、警察犬が別の男の人のにおいをかぎ始めた。すると今度はその人は壁に手をつかされ、身体検査をされた。しかし何も持っていなかったらしい。すぐにその人は解放された。おそらく何らかの物を吸っていて、匂いが体に残っていたのだろう。しかし証拠はなかったため、オフィサーは何もできなかったらしい。
アメリカからメキシコへ入り、またメキシコからアメリカへ戻った、たった15分ほどの出来事だったが、売り子の人の目線で国境を越える車を見て、どうにかしてアメリカへ入ろうとして逮捕された人を見て、警察犬に匂いをかぎまくられた人を見て、いろいろな人生を短時間に垣間見たような気分になった。国境には日常生活とは違う世界があるようだ。