昨日の昼休み、私は同僚の机の上にあった本を
パラパラと眺めていました。
日本で出版されている本のようです。
英語での「日本紹介」の本でした。
で、はじめのintroduction (英文)を
少し読んでみたところ、「うーん???」。
何が言いたいのか全然分かりません。
ちょっと不思議な英語でした。
正確に言うと、文法自体は正しくても、
全然意味を成してない英文だったのです。
それは日本人によって書かれた英語でした。
横にいた英語ネイティブスピーカー同僚に、
「ね、これ意味分かる?」と聞いてみたところ、
「分からん。何が言いたいのか、わからない。」
「でしょ。やっぱり私だけじゃないよね。」と納得する私。
更に同僚のアメリカ人とフィリピン人にも聞いてみましたが、
同じく「何が言いたいんだか、全然わからない。」との反応でした。
英語として、文法的にはOKでも、
肝心の中身が何を言いたいのかが、
英語としてはおかしかったのでした。
つまり日本人独特の発想を、
そのまま英語に訳しただけだったので、
同じ発想パターンを持たない西洋人には
理解不能な文章となっていたのでした。
多分、日本語で文章を作って、
そのまま英語に直したのだと思います。
これ、私たちには、いい教訓だな、と思いました。
英語で文章を書くとき、私たち日本人は、
「日本語での物事の考え方を一旦どこかへ置いておいて、
英語圏の人達の思考パターンで、
文章を書かないとならないのです。」
↑ これ、結構、大事です。
英語を書くときや、話す時は、
日本人だけにわかる話の展開の仕方ではダメで、
英語圏の人が分かるようなロジックで、
説明をしないとならない、ということです。
ちょっとその部分に書かれていた
英語を日本語に訳してみますね。
++++++++++++
「この本はあなたの目を見開くことになるよ。
日本人について二つの大事なことが分かって
きっと驚くと思う。
まず、日本人はあなたの隣人と同じように
物事を考えたり、行ったりするんだ。
二つ目はね、それと同時に、
日本人は、あなたの隣人とは
かなり違う考え方や、行動をするんだよ。
彼らは時には、あなたにとって
エイリアンのように見えるかも。
でも彼らは訪ねてくれる人には、
基本的に穏やかで親切なんだ。
日本人と幸せな出会いがありますように!」
++++++++++++
これがその英文の大雑把な訳です。
分かりにくいですね。
典型的な日本人の発想パターン英語だと思います。
まず、最初に言われている
「日本人についての大事な二つのこと」。
その後を読むと、その二つのことって、
日本人についてだけの驚くべきほどの
大事な二つのことではないですよね。
「隣の人」と言っていますが、
そもそもこの著者が言っている隣の人の定義が曖昧過ぎます。
例えば私が住んでいるアメリカって、東西の両側は移民だらけ。
ま、アメリカ以外の移民の多い地域でも、似たような感じでしょう。
こういう地域では、たとえ隣に住んでいる人でも
全く違う文化で、違う言葉で生活していることがよくあります。
一緒の共同体で生活しているだけで、
隣人が皆似たような人たちなんていう発想は、
アメリカ人にはないと思います。
ですので、この「一つ目のこと」を読むと、
「日本人が私の隣人と同じ様に考えたり、行動したりする」
というのは、どういうことだろう? と考えてしまうわけです。
そもそも隣の人たちを一つにくくってしまえると考えている自体で、
ちょっと英語圏の文化を知らなさすぎるかな、と思います。
全ての隣人を一つにくくってしまうことができるのは、
日本や韓国のようにハイ・コンテクストの一部の国だけでしょう。
※(コンテクストとは、この場合、
共通の価値観や歴史や伝統を持つ人たちを
表す人類学上のコンセプトのこと。
ハイだと、共通項が多く、ローだと少ない。
詳細は先日の記事にて。)
ま、とにかく移民の多い国、アメリカやその他の英語圏では
誰もが異なっていて当然、という考えを
持っている人が多いんです。
(= 英語圏のほとんどの国は、ロー・コンテクストの文化の国です。)
つまりアメリカ人をはじめとした英語圏の人にとっては、
隣人が同じ発想や行動をするとは、元々思ってもいない。
なので、「隣人」という一まとめにしてしまったところで、
この文章自体が、人を混乱させる内容になってしまっているんですね。
だって「隣人」そのものの定義が、この著者と英語圏の人では
共有できていないですから。
ですので、アメリカ人をはじめとした英語圏の人に向けては
意味が全然わからない文章になってしまっているんです。
誰も最初から、隣人たち皆が同じ行動をするなんて
思っていないわけですから。
もし行動と書きたかったのなら、
何かしらもっと人として共通項がある
具体的な行動を書かないとダメですね。
上の文章は、そういうわけで、
一つ目の大事なことはよくわからない。
そして二つ目のも大事なことも、
一つ目に対してのコントラストとして成り立たない。
なのでこれを読んだ人は、
「結局、それが何? これらのどこが
日本人についての二つの大事なことなの?」と、
ネイティブ感覚では思うのです。
つまり、この段落の中の文章のコンセプト自体が
ネイティブスピーカーには、理解できないのです。
いや、実は私も最初は全く理解できませんでした。
この段落は、日本人の発想で、日本文化の感覚で
書かれたロジックであって、外国の人には通用しないと思います。
日本人である私でも何が言いたいのだろう?
と首をかしげてしまいましたので。
よく考えたら、あ、隣人は皆同じ行動パターンをすると
思っている人によって書かれたんだな、と分かりましたが。
で、それを同僚二人に説明してみたところ、
少しは理解してくれたみたいでしたが。
同僚の一人は、「最初から日本人は君たちと違う
カルチャーを持っているんだ。それを今から説明するね。
きっと君の文化と違っていて驚くよ。」とか
「あなた」を使って、シンプルに書けばいいのに、
と言っていました。私もそう思います。
英語圏の文化と日本の文化が違うという点では、
英語圏の人も日本の人も、意見が一致するでしょうから。^^
とにかく英語を話す、英語を書くときには、
日本の文化や感覚が、そのまま英語圏の人に伝わるとは、
思わないようにしましょうね。
そうならないためには、先日から言っていますが、
聞き手に優しく分かりやすく話すことが大事。
相手は自分たちと同じ感覚を持っているなんてことを
初めから思わない。
ですから、英語では物事をストレートに説明するのが一番です。
【共通項は何もない】と考えて、いつも話すようにしましょう。
すると、きちんと分かりやすく説明してできるようになります。
いやー、不思議な本でした。^^
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