オリンピックも毎日夜中まで見ているが、ここ5日間は更にその後に「沈まぬ太陽」を読んでいた。昼間は読書をしないので、少し寝不足である。この本は去年9月に日本へ帰ったときに中古本で買って来たもの。やっと今週になって読み始めた。1巻から3巻まで眠い目をこすりながらも夢中になって読んだ。
昨日読み終わった御巣鷹山編は重い内容だった。当時事故があったことはもちろん覚えているし、残された遺書を新聞で読んで泣いたことも覚えている。しかし当時は思春期だった私なので、それ以上のことは、特に追求して記事を読んだこともない。なので今回、この本を読んで、ここまでひどい事故だったということを初めて知った。助かった人もいたので(4人だけだが)、亡くなった人の多くがこれほど悲惨な亡くなり方をしていたとは考えたこともなかった。
胴体がシートベルトでちぎれてしまったとか、顔が亡くなってしまった遺体とか、脳がない頭とか、頭皮だけとか、他の人の歯が食い込んだ背中とか、ばらばらになってしまった手足とか、想像しただけでも頭がおかしくなりそうな死体の様子が次々に本には現れた。そういう死体を運んだ人、検死をしたお医者さんの苦痛は大変なものだったろうと思う。そして助からないかもしれないと思いながら30分も揺れる飛行機の中にいた人たちの恐怖は私には想像もつかない。そして最後がこんな悲惨な死に方だったとは。
一応フィクションだと言うことだが、取材に基づいて書かれているので、多くの部分が本当のことだったのでは、と思われる。昨日の夜は読み終わった後、眠れなくなり、Googleで事件を探してみた。そしてこういうWeb siteを見つけた。http://www.goennet.ne.jp/~hohri/n-index.htm
本を読んだ後だったので、この検視にあたった歯科医師の話が、本に書かれていたことと生々しく重なった。更に写真により本の内容が、目の前で実際に起こったことかのようにまぶたに浮かんできた。実際に見たわけでもないのに、頭の中にイメージがありありと浮かんできたいうことは、文章が相当すぐれていたものと思われる。
こんな死に方を家族にされたら、残された人たちは一体何をして失った部分を埋めていったらいいのだろう。私たちが一瞬にして忘れてしまう事故の裏には、それぞれの人の人生があり、それらには多くの人が関わっている。日常生活に埋もれていると、そういうよく考えれば当たり前のことも、自分に直接のかかわりがない限り、簡単に忘れてしまう。人が自分の大事な人を失うのは、耐えられない苦痛だ。もう事故から相当な年数が経っているが、それでも残された人たちは一生生きている限り忘れることのできないことであり、そして人生を大きく変えられてしまったできごとだったのは間違いがない。このようなことがもう起きないことを強く願う。
読み終わっていろいろと考えた。この作家の文章は本当に力がある。4巻と5巻も続けて読みたいところなのだが、日本で買って来なかったので、すぐには読めそうもない。残念だ。