今日は学校へParking Permitをもらいに行った。学校までの距離を測ってみようと思ったのだが、正確な距離は分からなかった。なぜなら学校の前の道は通行止めとなっており、黄色いテープが道をふさいでいたからだ。おまけに両方向に走る道路が一時的に一方通行にされ、0.3マイル走るのに40分かかった。(分速12m。)ま、しかし大体の距離は分かった。6マイル少しあるようだ。
帰り道にMuseum of Toleranceの前を通りかかった。するとユダヤ人代表のような人が沢山のTVカメラを前にして、何か声明を発表していたようだった。あ、9.11だからか?明日はユダヤ教の大晦日にあたるようだが、別にそのことではTVクルーはやって来ないだろう。先ほどの学校の前の封鎖も9.11に何か関連していたのだろうか。
家に帰ってきてからはKOCEチャンネルをずっと見ていた。これはPBSの番組を流しているOrange Countyの放送局だ。KOCEはPBSによる教育番組、世界のニュース番組、ドキュメンタリー番組などを放送している。PBSは寄付により番組が制作されている、アメリカでのNHKのような製作局だ。今日は9.11に関する特番が組まれていたため、部屋の掃除をしながら3時間ほどずっとTVを見ていた。
最初の番組では、ビルの耐久性や高層ビルで避難するにはどうしたらいいか、ということについて放送されていた。(途中から見始めたため、正確ではないかもしれません。)二つ目の番組はイスラム世界と西側諸国がどのように関わり始め(第一次世界大戦後)、どのように西欧文化がイスラム圏で否定され今日のような関係になったか、という番組。そして三つ目はマンハッタンの子供たちがどのように立ち直ってきているかという番組だった。
三つ目の番組が一番心に残った。NYで実際に窓から飛び降りる人たち、崩れるビルを見た子供たちが、どのようにその事実に向き合っていくか、また同様に心に傷を負った他の国子供たちはどのように心のケアがされてきたかについての番組だった。比較対照として出てきたのは、長年戦争状態だったアフガニスタン、自爆テロに苦しむイスラエルである。
アフガニスタンでは80年代のロシアによる征服、90年代の内戦・タリバンによる圧政により、子供たちは常に銃の音、死と隣り合わせになった。いつ死んでもおかしくない状況での子供たちの精神状態は不安定なものだった。しかしアフガニスタンは20年ほど戦争・内戦を経て、やっと今は比較的平和な状態となり、小さな田舎町の子供であっても学校へ通えることになった。子供たちが立ち直ってきた様子が映された。「今はね、学校に行くと皆がいるから楽しいの。」「以前は何もできなかったけれど、今は勉強ができる。将来は医者になりたい。」という子供たちの声を聞くと、人としての力強さを感じる。ここではイギリスのサポートで団体が設立され、子供たちの心のケアを行ってきたそうだ。
一方イスラエルでバスの自爆テロに巻き込まれた少年は、「将来には何も希望を持てないし、いっそのこと刑務所に入って生活したい。刑務所の中の方がここより(住んでいる所より)よっぽどいいのではないか。」と言う。
ビルが崩れるところを見た子供たちは今でも苦しんでいるが、それでもその事件のことを話せる環境がある。アフガニスタンで子供の世話をしていた心理学者によると、立ち直るためには、「人に話すこと」が大事なのだそうだ。子供たちは人が死んだことにショックを受けたのはもちろんだが、それと同じように「そこまで自分の国が嫌われている」という事実にも戸惑っているそうだ。(これは多くの大人のアメリカ人も、知らなかった事実なのではないだろうかと思うが。)
かなりのショックを受けてはいるものの、アメリカの子供たちはそれでもやはり他の国の子供たちよりは立ち直るのは早いのではないか、と思う。なぜならしっかりと心身ともにケアをしてもらえる環境が整っているし、アメリカの子供は自分の意見をはっきりと言うことができる。「自分の感情を話すこと」が立ち直るために必要なら、アメリカの子供たちはどこの国の子供よりもしっかりと過去の経験を乗り越えていけるだろうと思う。
先日NYCへ行ったときに、グラウンドゼロを訪れた。工事の壁に向こう側に大きな空間があるだけだったので、あんな高いビルがあったなんて信じられないくらいだ。無差別テロは許せないが、攻撃し報復する、そんなことをしていては永遠に戦いは終わらないだろう。アメリカ人はどうも攻撃することに意識を集中しすぎているような気がする。文化の違い、宗教、石油などの問題が絡み、アメリカまたはイスラム教テロリスト集団どちらかが一方的に勝利することはあり得ないだろう。番組の中でも、例えアルカイダが壊滅状態になったとしても、新しいアルカイダができるだけだ、と言っていた。
やっと笑顔を取り戻すことができた子供たち、彼らの笑顔がずっと続くことを願う。それにしても自分達の子供の幸せよりも、自分達の宗教を守るために戦うこと、または国として相手を徹底的に潰すことの方が大事なのだろうか。聖戦、テロ集団も、アメリカ政府も、正義のために戦うと言うが、私から言わせてもらえば、正義のための戦争なんてありはしない。戦争で戦った人をVeteranと言い、褒め称える習慣がアメリカにはあるが、人を殺してきた人たちをそれほどまでに持ち上げること自体が、私には全く理解できない。戦うことが正義なんて言う文化が双方にある限り、子供たちに本当の平和は一生やってこないだろうと番組を見ながら考えた。