絶対話せる!英会話

ウェイトレス。

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仕事を辞めようかな、と最近考えるようになってきた。ウェイトレスの仕事のことだ。月に3回から8回ほどしかシフトを入れていないのだが(しかも学校のスケジュールに合わせて試験や宿題が重なる週末には仕事を入れていないというかなり優遇された仕事のスケジュールなのだが)、ウェイトレス仕事はいかんせん体も頭も疲れるのだ。歳のせいかもしれん…。

私はウェイトレスに向いていないといつも思っている。まず小心者なところが向いていない。私はとっさに質問されると、答えに詰まってしまうことがよくある。なのでオーダーをするときに「どっちがいい?」とか「君に任せるよ。」とか言われると、困るのだ。食べ物やお酒は個人個人好みが違うだろう。ところが、それを私の選択だけで決めようとする人がいる。「もしあまり好みでないお酒だったら、どうしよう?」とか、一応答えながらもあれこれ心配してしまう。

更に話をしているテーブルに(話が途切れない場合はやむを得ない)、「OKですか?」と聞きに行くのも好きではない。会話をさえぎってまで聞きにいかないといけないのが、どうも好きになれない。日本人なら何も言わなくても、あ、今あのテーブルは私を必要としているなと察知し、そしてお客のほうも何か必要なら何らかの合図をするだろう。私はその方がとてもやりやすい。もちろんアメリカ人も必要なら合図をするが、アメリカ人の場合は合図をされてからそのテーブルに行くのでは、ダメなサービスとなるのだ。そして日本人のように遠巻きにテーブルをチェックしているだけでは、アメリカ人はサービスを受けていないと感じてしまう。邪魔をしないようにチェックしている、そういう気配りを理解する繊細さを多くのアメリカ人は持っていない(単に文化の違いなのだが。)常に声をかけて、たわいもない会話を時にはして、初めて彼らはサービスを受けていると感じるのだ。ある意味、わざとらしいくらいのスタンドプレーが求められる。しかしそういう行動は、私が日ごろからあまり快いことと思っていないことなので、自分でそういう行動をすることにかなり抵抗がある。

加えて、私は元々そんなに社交的ではないので、たわいもない会話をするのが、実は苦手だ。(これは日本語であっても同様。)同僚や友人の間ではお喋りな私だが、一度会うだけで今後関わりがないと思われる人との会話は、あまり好まない。じっくりと付き合う人や、興味が同じ人、何か尊敬できるところを持つ人とは腹を割って会話をするが、当たり障りのないどうでもいい会話はあまり普段からすることがない。しかしアメリカではこのショートカンバセーションがとても大事。例えばレストランなどでは、これがチップの額に跳ね返ってくる。ま、自分一人の取り分が減るのならいいのだが、大抵の日本レストランではチップは皆で平等に割ることになっている。そのため、私がそういうわざとらしいサービスを怠ると、私以外の人にも迷惑がかかることになる。たまにはいい感じのお客さんで話をすることが楽しいこともあるが、そういうことは少ない。

そして能力的にも向いていないと思う。一度に10のことを別々の人から言われて、それをてきぱきと忘れずにこなすのは、私には至難の業だ。私は同時に多くのことを覚えてこなすのが苦手なのだ。覚えられるのはせいぜい3つくらいまでだろうか。この3つしなければならないことがあるときに、通りかかったテーブル3つから更に別々の用事3つを言いつけられると、最初の3つのうちの1つは忘れる可能性がある。後から落ち着いて考えれば思い出せるが、この3つが次々に前の行動を終えないうちに、例えば10近くしなければならないことが溜まってしまうと、最初の方のどれかを忘れてしまう可能性は高い。そういう状態が2時間続くとする。そうすると、どこかで何かを忘れてしまうことがあるのだ。しかし大抵のウェイトレスは忘れないらしい。忘れっぽい私としては紙に書くようにしたいところなのだが、忙しい時間帯は紙に書く暇もない。ただ走り回っているだけの間は、そんなことをしている暇もない。でも忘れない人もいる。そういう人を見ると、私は本当にこの仕事に向いていないなとつくづく思う。(本業ではないものの。)

そしてアメリカでのウェイトレスは、日本でのウェイトレスよりも大変だ。何せお客が日本とは比較にならないほどわがままなのだ。日本では考えられないようなことを言い出す客は毎日必ずいる。自分がしっかりとオーダーしたものを、「想像と違ったから変えてくれ!」とか、「この間と味が違うからタダにしろ!」とか、「あなた様は何様でしたっけ?」と聞きたくなるほどのスーパーわがままぶりが当たり前の世界なのだ。お寿司なんて季節モノなのだから、一年中同じ物が同じ味で食べられるわけがない。しかしそういう事実は、アメリカ人客の前では却下される。

彼らのスーパーわがままぶりに呆れはするものの、言った者勝ちのアメリカ社会なので、大抵の彼らのわがままは通ってしまう。そして何でもかんでも交渉しようとする。忙しいときに「to go order(御持ち帰り)」を断ると、「何でできないのよ?!」と食いつかれる。「今はオーダーが溜まっていて、これ以上to go orderは受けられないのです。」と説明すると、「私はお寿司を食べるのじゃないのよ。キッチンにオーダーしたいだけなの!」と言われると、この人の想像力は相当乏しいな、と思う。これだけ店の中が客で埋まっていれば、忙しいのはキッチンも同じだろうが。結局この客はマネージャーに「二度と来ないわよ、こんな店!」と捨て台詞を残して去って行った。

ウェイトレスをしていると、アメリカ人がどんどん嫌いになると言っても過言ではない。

スーパーわがままな図々しいアメリカ人相手であっても、どうも図々しくなれない私。お勧めを聞かれると、思いっきりの笑顔で答えながらも、「気に入らなかったら、どうしよう?」と考える私は、本当に性格的にアメリカでの接客業に向いていないと思う。

しかし向いていないと思いながらも、私の極貧学生生活を長年支えてきたのは、ウェイトレスの仕事である。しかしここ数ヶ月はお金の点では劣るものの、他の仕事もしている。どこまで働けるのかが自分でもよく分からない。来学期はまた4科目を取る予定であり、引き続き仕事2つをしていけるだろうか。何らかの社会活動もしたいとも思っている。仕事を2つしている限り、何か新しいことに足を踏み入れる機会を失いそうな気がするのだ。もちろんウェイトレスを止めてしまうと、更にもう一段低いレベルの貧乏生活となってしまいそうなのだが、学期が始まってからの時間的なことを考えると、ウェイトレスは止めた方がいいかもしれないと最近は思い始めた。理由は上記に書いたとおりにいろいろあるが、それに加えて肉体労働はその後の時間の使い方にも影響を及ぼす。燃え尽きた肉体労働の後は、何もする気が起きず、勉強をするのが難しい。そして前のバイト先では、従業員同士の会話は英語だけだったが、今の仕事場の場合、会話はほとんど日本語がメインなので、大した英語の訓練にもならない。

ウェイトレスを続けるメリットとして大きいのはチップだけだ。最低賃金のウェイトレスにとってはこれが大きな収入となるのだ。とりあえず来学期が始まる頃までは、もう少し今後どうするか考えてみることにしよう。私はアメリカでのウェイトレスには向いていないが、生活に金銭的に潤いを与えているのもこの仕事なのだ。
うーむ。悩む。

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