春学期に取った授業を振り返るの第2弾。
「African American Literature」。
私はこの授業を取って、
いかに自分は英語が読めていないか、を思い知らされた。
英語力のみならず読解力のなさにも苦しんだ。
しかしこの授業を通して私は初めて
文学を学ぶ楽しさということが分かったような気がしている。
最終的にはBを取ったクラスであるが、
この授業はGPAのことだけを考えて
ドロップするようなことをしなくて大正解であったし、
コミカレの授業の中で
最も私に影響を与えたクラスの一つだった。
文学をどう理解すればいいか、
この授業を通して初めて分かり、
そしてそれは私の今後の人生の豊かさに
大きく影響を与えるだろうと思っている。
African American Literature(後半)、
この授業ではハーレムルネサンスから
現代までの黒人文学を学んだ。
参考までに実際に何を読んできたか、ちょっと書き出してみる。
(テキストは、“The Norton Anthology of African American Literature”。
もちろん小説1冊がanthology(選集)に出ているわけではなく、実際は数小節ごとの抜粋である。)
Authur Schomburg — “The Negro Digs Up His Past”
Alain Locke — “The New Negro”
(ハーレムルネサンス当時の黒人意識を変えていこうとする2つのエッセイ。)
Jean Toomer — “Cane”
(ハーレムルネサンス最高傑作と言われている、詩とショートストーリー。)
Zora Neale Hurston — “Their Eyes Were Watching God” (小説からの抜粋。)
Claude McKay — “If We Must Die,” “Africa,” “America”
Sterling A. Brown — “Long Gone,” “Southern Road,” “Slim Greer”
Langston Hughes — “The Negro Speaks of Rivers,” “Mother to Son,” “Harlem”
Countee Cullen — “Yet Do I Marvel,” “Incident”
(これらは詩。)
Richard Wright — “Black Boy”
Ralph Ellison — “Invisible Man”
(小節からの抜粋。)
Melvin B. Tolson — “Dark Symphony”
Margaret Walker — “For My People”
(詩。)
Hoyt Fuller — “Towards a Black Aesthetic”
Addison Gayle Jr. — “The Black Aesthetic”
Larry Neal — “The Black Arts Movement”
(これらは“The Black Aesthetic”と題された
「Addison Gayle Jr.の編集による、黒人文学へのエッセイ集」からの抜粋。)
Amiri Baraka — “Preface to a Twenty Suicide Note”
Mari Evans — “I Am a Black Woman”
(詩。)
Malcolm X — “The Autobiography”
Martin Luther King Jr. — “Letter from Birmingham Jail”
(マルコムXの自伝とMartin Luther King Jr.が逮捕されたときに獄中から書いた手紙。)
Maya Angelou — “Still I Rise,” “I Know Why the Caged Bird Sings”
Alice Walker — “In Search of Our Mothers’ Gardens,” “The Color Purple”
(小説からの数小節の抜粋。)
そのほか、時代背景や文学の流れなどの説明ページなども沢山読まされた。
まず学期の始めにAuthur Schomburg “The Negro Digs Up His Past” と
Alain Locke “The New Negro”を読まされたとき、
文章はどうにか読めるものの、意味が全く理解できず、
私はかなり途方に暮れた。
何が言いたいのか全く分からなかったのだ。
授業で教授の説明を聞き、やっと作者が何を言おうとしているのか、
かろうじて少し分かると言った程度。
しかもこの授業は読んできたことに対しての
ディスカッションが中心のクラスだったため、
最初の1ヶ月、私はとてもおとなしかった。
内容が理解できていないのだから、何も発言のしようがなかった。
2月から4月まではリーディングも追いつかず、
斜め読みで終わらせていたこともある。
しかしハーレムルネサンスの時代の詩や小説、
エッセイが終わりに近づいてきた頃、
やっと黒人文学に慣れてきた。
それは言葉遣いであったり、
あるいは作者がどうしてこういう発想になるのか、
なぜこれをこの時期に言わなければならなかったか、
どういう歴史的事実がその作品を書かせているのかが
おぼろげながら分かってきたのだ。
すると自分の読む姿勢、読み方が変わってきた。
そしてこのとき「私は人生の今までの読書時間を、
実はとてつもなく無駄にしてきたのではないか」と考え始めた。
つまり私は本を読んだときに、
その本がそのときの自分にとっておもしろいか、
おもしろくないかだけでその本を評価していたことに気が付いたのだ。
これはとてつもない自分の思い上がりだったと思う。
もちろん作品が一旦公表されてしまえば、
ある程度の評価は読者に委ねられる。
だが、その読者がその作品の価値を理解するに
値しない程度の知識しか持ち合わせていなかったら、
その作品は正しく評価されていないことになる、
ということに気が付いたのだ。
そして自分の読書に対する過去の態度を恥じた。
それからの私は、文章からの文字通りの意味だけではなく、
作者にこう書かせている思いは何か、
過去のどのような経験から作者がこう書いているのかを考えるようになり、
そしてそれを目の前の文章と重ね合わせてきた。
黒人文学の場合、こういうアプローチが有効だと思う。
特にRichard Wrightの文学からはこういった背景を考えないと、
何も得られない。少し説明をすると、
ハーレムルネサンス文学は
Richard Wrightの“Native Son”で終わったとされている。
彼はBlack Naturalismを生み出した人であり、
それは今までの黒人の「白人へ対するお願い」を止め、
ありのままの世の中の不公正を訴え、
反骨精神を打ち出した新しい文学を作り出した。
彼のどういう意見を持っていたかは、
彼のエッセイ“Blueprint for Negro Writing”から分かることができる。
参考までに引用すると以下の通り。
Negro writing assumed two general aspects:
1.It became a sort of conspicuous ornamentation, the hallmark of “achievement.”
2.It became the voice of the educated Negro pleading with white America for justice.
つまりこれまでの黒人文学は、
「黒人が何かを成し遂げたという自己満足に過ぎなかった」
そして「教育を受けた黒人が白人の良心に訴えるだけのものであった」と指摘し、
過去の黒人作家のその姿勢を非難しているのだ。
そして生み出されたのが、“Native Son”である。
(実は私はまだこれを読んでいない。
その続きとなるのが、“Black Boy”であり、私はこちらは全部読んだ。)
そしてこういう姿勢が、
40年代後半からの戦争での悲惨な黒人の扱い、
60年代、70年代の公民権運動と絡まって、
Black Art Movement & Black Aesthetic へとつながっていくことになる。
「The Black Aesthetic」からは、
前述したとおりHoyt Fuller “Towards a Black Aesthetic”、
Addison Gayle Jr. “The Black Aesthetic”、
そしてLarry Neal “The Black Arts Movement”の3つのエッセイを読んだ。
これは日本語訳があったので、本を購入し、英語と日本語両方を読んだ。
しかし最初日本語で読んだときですら、全く意味が分からなかった。
自分は本当はとてもバカなのではないか、と思ったほどだ。
その後何度も繰り返し読んだところ、
実は自分にはその背景を理解するだけの知識がなかったということが分かった。
今でも完全に分かったとは言えないが、
作者が何を言いたかったのかということだけは理解できたと思う。
3人の作者に共通している根本の考えは、
「黒人はアメリカ人になろうとすることを止めよう。
黒人は黒人としての美しさがある。
白人社会、つまり自分たちに不平等を与える不正な社会
(同じ人間をひどく扱える非人間的な行為を
認められる正しくないモラル)に迎合することはもう止めよう。
そのようなモラルを持つ白人に訴えるのではなく、
黒人による黒人のモラル、Black Aestheticを確立しよう。
そしてそれらを黒人に向かって直接語りかけよう。」というもの。
学期最後の週に私はこのクラスのために2つのペーパーを書いた。
この3つのエッセイとAlice Walker の
“The Color Purple”をじっくりと読んだ。
そのとき初めて自分の中で何かがつながった気がした。
ペーパーには何を書こうか悩んでいたのだが、
その瞬間、一気に書きたいことがめらめらと湧き上がり(←大げさではなく本当に)
一気にペーパーは書き上げることができた。
ただ締め切り直前だったので、
見直す時間がなく自分の伝えたかったことが
最高の状態では伝えられなかったことが残念だったが。
長いので、「その2」の2/2へ続きます。