今回の wildfires はいつもの山火事ではない
日本でも沢山報道されていることと思いますが、今、ロサンゼルスの周辺ではいくつもの火事が起きています。
今回の火事は、火事の規模というよりも、住宅地に近いところで起きたということが、日頃起きる火事とは違っています。先ほどニュースを見ていたら、Red Crossの代表の方も、「今回の火事は他の火事とは違う。これは urban wildfires である。」と言っていました。
カリフォルニアに20年住んでいる私も、本当にそう思います。火事というのは、山で起きるものと思っていました。ですからまさか海のすぐ横の家が燃えるなんて想像もしていませんでしたし、住宅地にまで火が広がるなんていうことも思ってもいませんでした。今回の火事を見て、カリフォルニアにいる限り、火事から逃れられる場所はないんだな、と考えを改めさせられました。
今回燃えた Malibu の地域は、高級住宅地でスターが多く住んでいる地域でもあります。メル・ギブソンやパリス・ヒルトンの家が燃えてしまったということもニュースで聞きました。そんな海沿いの高級住宅地が燃えてしまうなんて、本当に驚いています。今は Brentwood にまで避難勧告が出されているそうで、「そこって、もうすぐUCLAじゃない…。」とわが母校の心配もし始めました。
本当に今回の火事は、住宅地や海や市街地に近いということで、今までの山火事とは全てが違うと思います。それは燃えてしまったものが山の木などではなくて、建物が多く損害を受けているからです。昨日の時点で、12000 structures がダメージを受けた、あるいは壊れたと放送されていました。(※)
アメリカでもっともひどい経済損失になる可能性
そしてLA Timesの記事では「Economic loss from L.A. wildfires could top $50 billion, making it one of the costliest U.S. natural disasters.」と紹介されていました。
訳すと、「ロサンゼルスの山火事による経済損失は、500億ドルを超える可能性があり、アメリカで最も費用のかかる自然災害の一つになるかもしれません。」1billion が10億ですから、50 billionは500億ドル、日本円にすると、ゼロを2つ付け足して、今だと1.5倍くらいですね。ということは少なくても7.5兆円でしょうか。もう規模が大きすぎてよくわかりません。
ただこれは、今時点でのあくまでも可能性の話です。「The loss could top $50 billion.」で、【可能性のcould】が使われていて、500億ドルを超える可能性があると言っているにすぎません。
カリフォルニア住人は火事と無関係ではいられない
私はカリフォルニアに来るまで、こんなに毎年たくさんの火事が起きることを知りませんでした。今は昔ほど情報はすぐに手に入らなかったこともあるとは思いますが、全く知らなかったのです。2003年にアメリカ人ルームメイトと暮らし始めたときに、彼女のお付き合いしていた人がお金持ちで、火災から焼け出された人たちのために、家を20軒建てそれを全部寄付したと聞いたのが、初めて火事を意識したときでした。
それからは直接自分の目でも、毎年火事を2,3件は見てきました。日本に一時帰国をして帰って来たら、裏山が真っ黒になっていたこともありました。ロサンゼルスで大学生をしていた頃も、グリフィス天文台の辺りを運転すれば、燃えた木を見ることもよくありました。今の家の近所でも、黒焦げになった木や枯れ草、そういうものは当たり前に普通に見るのが、カリフォルニアでの生活だと思います。都市部はそんなに火事をたくさん見ないでしょうが、カリフォルニアは山に囲まれている土地なので、山火事はいつも見聞きします。
カリフォルニアの火事の規模は想像を超える
それもそのはずで、昨年2024年はカリフォルニアだけで「8,024 wildfires」です。何と火事が8000件以上もあったのです。燃えたエーカー数は「1,050,012エーカー」。これを平方キロメートルに直すと、4249.25 ㎢。これがどれくらいの広さかと言うと、富山県(4,248 ㎢) と同じくらいの面積のようです。東京都が2,191 ㎢ なので、大雑把に言うと、東京の倍くらいの面積が去年一年間で燃えてしまった…ということになります。(正確に言うと、1.94倍です。)
上のデータは、近所で火事が起きると、私も毎日チェックするCAL FIREのウェブサイトからのデータになります。CAL FIREは、The California Department of Forestry and Fire Protection の短い名前です。主な業務は、山火事の消火と予防を行っているところになります。
そしてカリフォルニアがどれくらい広いかと言いますと、163,696 mi²。平方キロメートルに直すと、423,970.69 ㎢。日本の面積は、外務省のデータによると、378,000 ㎢。ということは、カリフォルニアの方が日本全体よりも少し広いことになります。でもそうだとしても、日本より少し広いくらいの中で、東京都が約2つ分燃えてしまうというのは、考えられなくないですか?富山県全部が燃えてしまうなんて、日本では考えられない規模ですよね。それに日本で火事が8000件もあったら、びっくりしませんか?
日本 | カリフォルニア | |
面積 | 378,000 ㎢ | 423,970 ㎢ |
火事で燃えた面積 |
(富山県と同じ) |
4249.25 ㎢ |
そういうわけで、カリフォルニアの山火事って、数だけでもなく、燃える面積の広さも半端ないのです。だから住んでいるだけでも、山火事は毎年どこかで直接目撃することになるのですね。
実は昨年の秋には、割と近いところで火事が起きまして、避難勧告は出ていなかったのですが、自主的に避難の準備をしました。荷物をスーツケース6つに詰めて、余分な車2台を隣の市の親戚の家に預けました。幸い、火は私の家とは反対側に風の影響で広がっていったので、避難せずに済みました。でもいつ何が起きるかわかりませんから、寝るときには枕元に必要なものを置いて寝るようにしています。
昨年の近所の火事では、灰が降ってきましたね。朝起きたら、車が灰だらけになっていました。空の色は気味の悪いグレー色でしたし、何かが燃えている匂いがしていました。空が灰や煙でグレーになるというのは、毎年どこかで見ます。
強風は台風並み
今回の火事も風の影響を強く受けています。皆さんも聞いたことがあると思いますが、カリフォルニアではこの時期 Santa Ana winds という風が吹きます。それが本当に強いのです。どれくらい強いのかをわかっていただくために、BBCのこの文を紹介します。
「The strength of the wind is what helps to spread fires rapidly. Speeds of 60 to 80mph (95-130km/h) are common, but gusts of up to 100mph (160km/h) can occur during the worst Santa Ana events.」(※)
日本語にすると、
「風の強さが火災を急速に広げる要因となっています。時速60~80マイル(95~130km)の風速は一般的ですが、最悪のサンタアナ風の際には、時速100マイル(160km)に達する突風が発生することもあります。」
このスピードがどれくらいすごいのか、気象庁のサイトから調べてきました。(※) 100㎞ですと、非常に強い風ですね。そうですよね。高速道路の車の速さになりますから。そして160㎞になってしまいますと、特急電車のスピードで、屋外での行動は極めて危険らしいです。そして多くの樹木が倒れる、走行中のトラックが横転する可能性もあるらしいです。そして時速125km くらいが風速30-35m くらいで、非常に強い台風くらいのようです。
というわけで、サンタアナの風は台風並みだということがわかりました。どうりで我が家も被害があったわけです。しかし、一応風による被害はあったのですね。
まず一つ目は、家の外に出しておいたごみバケツが(実際かなり大きいです。多分ドラム缶よりも大きいくらいです。)3つとも全部飛んでいってしまいました。50メートルほど先で横たわっているのを見つけました。おまけに一つはフタが壊れてしまいました。よくこんな重いものが飛んだな…と思いました。
そして、サンルームの厚いアクリルの屋根が壊れ、飛んでいってしまいました。たまたま夫が見ていたのですが、亀裂が入ったと同時に闇夜に吸い込まれていってしまったそうです。「映画のワンシーンかと思った。」と言っていました。下の写真で、一部だけ青空がよく見えますよね。そこのアクリルが飛んで行ってしまったのでした。本日修理しました。
あと、これは私の家の話ではありませんが、3日前には、近所のガソリンスタンドの屋根の片側が地面についてしまっていました。写真はその翌日に直しているところです。こんなに重たそうな屋根が崩れるなんて、どれだけ風が強いのか、おわかりいただけるかと思います。びっくりしますよね。
なぜ停電?
今回は私の家の周りでは火事は起きていません。電気会社による強制的な停電だけでした。今年は年が明けてまだ11日目だというのに、既に3回も停電を経験しています。停電は、英語では a blackout とか、a power outage とか呼ばれます。
なぜ停電にするのかと言いますと、山火事が発生するリスクを減らすためです。強風&乾燥という条件が整うと、電線が切れたりして火花が起きてしまうのを避けるためです。たった一つの火花 (a spark) でさえも、火事を引き起こす原因になってしまうのですね。それで強制的に停電がされました。
こういう停電は、PSPS(Public Safety Power Shutoff) と言われているようです。(下の写真を参照してください。)私の家もこの中の一件だったようです。3回目の停電は、28時間続きました。大型のガラスの入れ物に入ったロウソクをいつも20個くらい備えているので、ロウソクの火で夜は過ごしました。
下の写真のように、冷蔵庫も冷凍庫も停電になってから一度も開けなかったので、中身はすべて無事でした。停電になったらまずすべきことは、冷蔵庫を開けないようにするということです。このおかげで牛乳もヨーグルトもすべて無事でした。アメリカは停電が多いので、こういうところは慣れてきました。
カリフォルニアの山火事は自然のサイクルの一つ?
火事がカリフォルニアの自然サイクルの一つとUCLAの環境学の授業でも教わりましたが、それにしてもここ最近の火事は自然のサイクル以上のことが起きているような気がします。Climate change による影響ももちろん指摘されています。
次回はこのカリフォルニアのエコシステムについて書いてみようと思います。